モルト|モルトの正体と効果

モルトの基礎知識について解説

 

パン職人の間では、なじみのある原材料のモルトですが、製パンを始めたばかりの人には聞きなれない原料でしょう。

 

普通モルトといえば「シングルモルト」やビールの原料である「モルト」を思い浮かべるでしょう。

 

モルトを日本語に直すと「麦芽」のことを言います。

 

パンで使われる「モルト」はモルトシロップのことを指しますが、「モルトシロップ」と呼ぶ人は職人の間にはほとんど見られません。

 

それほど、製パンと切っては切り離せないなじみ深いものであるともいえます。

 

ハチミツのような物性でべたべたしており、口にするとコクのある甘味があることから甘味料として添加していると勘違いされている方も多いと思います。

 

よくあるネット情報では「ハチミツで代用できます」といった内容や、反対に「モルトを入れないと発酵しません」などめちゃくちゃな意見も散見されます。

 

モルトは単純な甘味料というよりもう少し複雑でかつ重要です。

 

ここではその作用についてみていきましょう。

 

酵素について

 

なぜモルトを製パンで利用するのか?

 

その答えは、モルトの成分の一つである酵素について理解することで合点がいくものになります。

 

モルトに入っている製パンに強い影響を与える酵素はアミラーゼというデンプン分解酵素です。

 

アミラーゼは、デンプンを分解し麦芽糖をつくりだす酵素です。

 

麦芽糖は、イーストの栄養となり発酵を助けるとともに生地中の糖分を増やすことで深みのある味わいにしてくれています。

 

ですから、フランスパンのような無糖生地においてアミラーゼを強化することで発酵時間を短くしたり発酵を促す作用があります。

 

さらに生地のうまみも引き出していると考えられます。

 

 

モルトがなければフランスパンは作ることができないのか

 

ではモルトを使用せずフランスパンのような砂糖を配合しないパンはつくることができないのか?

 

もちろん、なくても作ることができます。

 

理由はパン生地中(正確には小麦粉の中)にすでにアミラーゼが含まれているからです。

 

そのアミラーゼがデンプンを分解し麦芽糖をつくり、イーストが麦芽を使って発酵するということです。

 

ですが…

 

発酵時間やパンチの強さなどモルトを使ったときと微妙に変化するので調整が必要になります。
また、味に奥行がなくなったり、焼き色が薄くなったりします。

 

ですから、モルトを使用する方が安定した製品を作りやすくなります。

 

無糖生地だけに入れるのか

 

リーンな無糖生地にだけ配合すると思われがちだが必ずしもそうではありません。

 

私自身も加糖生地に使用していた経験があります。

 

味や見た目において変化を感じることがでます。

 

必要かといわれると無糖生地ほど必要ないかもしれないのですが、風味に変化を与えることができるためもう一味インパクトがほしいと思った時に使ったりします。

 

使用量が少ないが発注ロットが大きくて困るときなどは、積極的に使用していくのも良いでしょう。

 

また、ベーグルをゆでるときのお湯にも少量溶かしこんであげると焼き色や風味を改善できます。

 

焼き色の改善

そのほかに生地の伸びを良くしたり、生地中の麦芽糖が増えるので焼き色の改善に効果があります。

 

フランスパンなどでは、モルトが入ることで均一に黄金色に焼き上げることができます。

 

計量するとき

 

モルトを扱う上で困るのが計量作業です。

 

ベタベタと水あめのように扱いずらいですので
あらかじめ同量の水で溶かしておくと使いやすくなります。

 

2〜3日冷蔵庫で保管できるので、ある程度まとめて作っておくこともできます。

 

使く時は、軽く混ぜてからモルトの必要量の倍の量で計量します。

 

メーカーによる違い

モルトシロップはメーカーによって酵素活性が違うので、

 

風味や発酵状態を見て加減する必要がでてきます。

 

おすすめはディアイタリアーナ社製のユーロモルトがおすすめです。
国産品に比べ活性が強いです。
イタリアーナ社製|ユーロモルト

 

国産のものを使用するときは量を加減してください。

 

モルトの製造方法

最後にモルトは何から出来ているかについてもお話しておきます。

 

麦は発芽するときに強い酵素で胚乳部のデンプンを分解して栄養とします。

 

モルトは質の良い酵素を得るため大麦を使用してつくられます。

 

大麦に一定の条件(温度や湿度)を与えることで発芽させ、濃縮してシロップ状にします。

 

乾燥させたパウダー状のもの製菓原料店で販売されているので。
保存性や使用料を考えて選ぶとよいでしょう。

 

アサヒビール製モルトフラワー(モルトパウダー)

 

オリエンタル製モルトエキス

文:佐藤 俊昭

 

 

 

 

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