油脂についての解説
製パンにおいて、油脂がパンにもたらす効能はいったい何でしょうか?
近年、言われているトランス脂肪酸の問題点についても見ていきましょう。
油脂の働き
製パンでの油脂の主な働きとして、一番に感じやすいのは風味ではないでしょうか。
バターやマーガリンの香りは、食欲をそそり幸福感をもたらします。
また、オリーブオイルなどは、もう日本でもなじみの香りになりました。
多少クセを感じる人もいるようですが、エクストラバージンオイルはパンに華やかな香りを与えてくれます。
その一方で、風味を感じないショートニングもよく利用されています。
ショートとは、サクサクした食感を表しており、その名の通りパンに歯切れのよいサク味を与えてくれます。
使い方としては、歯切れをよくする目的としてハード系のパンに1〜2%配合したり、
バターだけではくどすぎるとき、ショートニングと併用して軽さを出すようにします。
製パン性では伸展性をよくし、しなやかに伸びる生地に仕上がります。
しかし、ブリオッシュなどの油脂量の多い配合は乳化が難しく、
いたずらにミキシングタイムをのばして、生地の温度上昇を招いてしまうことがあります。
対策としては、原材料の冷却や、ミキシング時のミキサーボウルの冷却
また、冷えたバターを麺棒などで叩いて伸展性を出し数回にわけて投入するなどが挙げられます。
製品時点では、パンの老化を遅らせる作用があります。
これは、油脂が水分の蒸散を防いでいるためです。
油脂の保存方法
マーガリンやショートニングは比較的安定しているため、保存期間は概ね6か月程度です。
冷暗所での保存になります。
バターは冷蔵もしくは冷凍にしますが、常温で放置したりすると著しく風味が劣化します。
冷蔵庫でも比較的温度の低い場所での保存が好ましいです。1週間以上保存する場合は、冷凍保存が良いでよしょう。
いずれにせよ、鮮度のよいものをつかうよう心がけることがたいせつです。
適正な在庫管理をして、早めに使い切りましょう。
トランス脂肪酸
トランス脂肪酸の問題が近年表面化してきています。
食の安全意識が高まる中、製パン従事者も敏感に情報をキャッチしなければならなくなってきました。
簡単に言うと、油脂を溶けにくくするために水素を添加しますがそのとき副産物としてトランス脂肪酸ができてしまいます。
大量に摂取すると悪玉コレステロールがふえて、心疾患などの健康被害をもたらすことが報告されています。
日本人の平均摂取量は摂取カロリーの0.7%といわれておりWHOの基準1%は下回っています。
しかし、食の欧米化が進むと今後基準をオーバーする可能性も考えられます。
ちなみに日本のショートニングなどは、脂質の8%ほどがトランス脂肪酸であるといわれていいるようです。
過剰に反応するのも問題ですが、客観的なデータをもとに説明できるよう準備しておくことも大事であると考えます。
バター不足
近年、バター不足が頻繁に起こりバターをこだわってつかっているパン職人にとっては頭が痛い問題となっています。
なんとか、使用量を確保できればよいが、もはやメーカーや国産という点では妥協も必要になって来るところもです。
しかしながら、コストをかけバターにこだわり続けるよりむしろ、新しい原材料を使用していく柔軟性も必要です。
メーカーも知恵を絞り、コンパウンドなど良質な製品を提供してくれています。
この機会に使用を検討してみてはいかがでしょうか。
バターに限ったことではなく、さまざまな原材料のおかげでパンを製造することができます。
今一度、お客様の目線に立ちお客様がなにを求めているか考え直し、配合や原材料を見直してみるのも良いかもしれません。
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