食パンの捏ね方

パン捏ね方について、少しお話します。

 

ご家庭でパンを捏ねる時、ホームベーカリーやニーダーなど機械で捏ねる方も多いでしょう。

 

ここでは、手で捏ねるいわゆる「手ごね」について私の偏った考え方をお伝えします。

 

偏っているため、多分正しくない部分があるかもしれません。

 

しかし、他人の間違った意見もご自身の考え方を少し客観的に見ることができたりするものです。

 

参考程度にご覧ください。

 

パンは捏ねない

 

いきなりですが、パンは捏ねない方が良いという意見を聞いたことがありませんか。

 

私は、この意見に賛成です。

 

捏ねないパンで有名なのが、ロデブやリュスティックといったパンです。

 

非常に作りにくいパンですが、たっぷり給水させて作ります。

 

しっかり熟成させ、しっかり焼きこんで仕上げます。

 

そうすることで、焼きたては皮がカリカリというかゴリゴリですが、香ばしく小麦の風味が強く感じます。

 

捏ねないとどんなパンになるか

 

捏ねないことで、パンは膨らみにくなります。

 

最近はあまり噛んでいるを見なくなりましたが、フーセンガムをイメージしてみてください。
大きなフーセンを作ろうと思うとしっかりと噛んで、均一な柔軟性に富んだガムベースにしなくてはなりません。

 

グルテンも似たようなもので、捏ねたあと指の指紋を透かして捏ね具合を確認するほどしっかり捏ねると
柔軟性に富み、大きく膨らむことになります。

 

つまり、捏ねないと膨らみにくいパンになります。

 

捏ねないことで、小麦粉の中のデンプンとたんぱく質が壊れにくいと推測しています。

 

また、空気を抱かないため酸化のスピードが捏ねたものと比べてゆっくり進むように感じています。

 

このようなことで、小麦の風味が残り、カリッとした皮のパンに仕上がると考えています。

 

捏ねないとおいしいパンになるのか

 

捏ねなければおいしいパンになるかというと、それほど単純でもありません。リュスティックなんかは、あまりにも捏ねないため、複数回にわたりパンチを行うことで、生地の強度をつけ、オーブンに入れた後ぷっくり膨れるように仕上げます。

 

また、給水の量も比較的多く配合します。

 

捏ねないため生地はしなやかさを失います。その分、水を多くして生地を柔らかくすることでカマ伸びしやすく仕上げます。

 

また、配合(レシピ)の問題も出てきます。

 

フランスパンやリュスティック、ロデブのような砂糖を加えないパンは比較的捏ねないのが一般です。

 

では、バターロールのような比較的リッチなパンはどうでしょう。

 

一般的な配合では、先に述べたように指紋が透ける程捏ねます。

 

これを、あまり捏ねずに作るには、生地を少し柔らかくして膨らみやすくします。
発酵中も一度パンチを入れた方が良いでしょう。このように、少し工夫や手間がかかりますが、一般的なバターロールより私は美味しく感じます。

 

つまり、捏ねないと風味は増して美味しくさせることはできますが、「ハンドリング」といって取り扱いが難しくなります。
すべてのプランがうまく進んで初めて美味しくなります。

 

もともとはかなりしっかり捏ねてました。

 

私もパン屋を始めた頃は、しっかり生地を捏ねることがおいしさを生むと考えていました。

 

ですが、10年程前、全く捏ねないで作る食パンを作ってるパン屋さんのパンを食べて衝撃を受けました。
くちどけはブリオッシュのようで、配合は少しリッチなまさしく「食パン」でした。

 

「こんな口どけの食パンは初めて食べた」と感動しました。

 

実際に自分でも製法を真似して作ってみたところ、全く同じ食感に仕上がりました。

 

間違いなく、「捏ねない」ことでこの食感が生まれると確信しました。

 

その後、ミキシングについて深く考えるようになり現在に至ります。

 

なんでも捏ねないのが良いか

 

かといって、なんでも捏ねないのが良いかというとそこもそんな単純でもありません。

 

少なくても菓子パンはかなりしっかり捏ねますし、ブリオッシュなんかは1時間捏ねたこともあります。

 

ブリオッシュや菓子パンはバターの風味や卵の風味で美味しく食べるパンと考えていますので、しっかり捏ねます。

 

しかし、食パン、バターロールくらいは捏ねない方が美味しく感じます。

 

捏ねないパンの欠点

 

捏ねないパンの欠点は、「ふわふわ」しないことがあります。メロンパンのようにふわふわのパンにガリガリの皮が好きな場合はしっかり捏ねた方がイメージ通りに仕上がります。

 

また、先に述べたハンドリングの悪さから、必然的に発酵時間を長くとることになります。
発酵を進めることで、べた付きを抑えます。
またパンチを入れることで骨格を強化する必要もあります。

 

今の考え方は

 

最初に「捏ねないで作る食パン」に出会った頃は、極端にミキシングを短縮していました。

 

しかし、今の考え方は一般的な捏ね方の8割くらいを目指しています。

 

捏ねあがりでは薄い膜を作り指紋を透かそうとしてもちぎれてしまう程度です。

 

そのくらいが、製法的にバランスがとれ、風味も十分に感じられるパンに仕上がると考えています。

 

 

 

 

文:佐藤 俊昭

 

 

 

 

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