小麦粉の分類や保存方法についての基礎知識
小麦粉の基本的な知識をご紹介していきます。
基礎的内容ですが、今後の小麦粉を取り巻く環境の予測も含めお話していきます。
小麦の産地
日本に輸入される小麦の産地は少し前まで、アメリカ、カナダ、オーストラリアがほとんどでした。
現在でも94%程度が上記の産地が占めています。
しかし、今日では数量は限られるものの国産小麦や、フランス産のものまで比較的気軽に手に入れることができるようになってきました。
理由としては、やはり食の多様化とともに差別化を進める製パンメーカーや製粉会社が増えてきたからと推測できます。
だからこそ作り手にはさらに深い小麦粉の知識が求めらて来ていると考えます。
基本的な小麦粉の知識を学ぶことによって、小麦粉のブレンドや、小麦の選択に役立ちます。
それでは日本における、小麦粉の分類方法から見ていきましょう。
分類
日本国内において小麦粉がどのように分類されているかを確認していきます。
小麦粉は一般に2種類の分類法を組み合わせてメーカーから案内されています。
ひとつは、たんぱく量であり、強力粉や薄力粉などに分類されます。
たんぱく量
製パンでは、主に強力粉を使います。
強力粉は生地の骨格を作るグルテンの含有料が多くため、コシの強い生地を作ることができます。
グルテンが多いと粘弾性(ねばりと弾力)に富み、ふっくらとしたパンに焼き上げることができます。
薄力粉を使ってパンを作ったらどうなる?
グルテンは水分を吸収しながら作られていく性質があるので吸水は十分に入れることができなくなります。
さらにグルテンの質は脆弱ですぐに切れてしまいます。
結果的にボリュームに欠けた硬いパンに焼きあがります。
強力粉と薄力粉は小麦そのものから違います
強力粉は、硬質小麦というタイプの小麦から作られます。
一方、薄力粉は軟質小麦という種類の小麦から作られています。
たんぱく質の分類基準
下記のような基準で分類されています。
グルテンはたんぱく質ですので、たんぱく量イコールグルテンと考えておいてよいでしょう。
種類 |
たんぱく |
製パン性 |
強力粉 |
10.5%〜13.5% |
良好 |
中力粉 |
8.0%〜10.5% |
一部で良好 |
薄力粉 |
6.5%〜8.5% |
不良 |
灰分量
もう一つの分類法が灰分量です。
特等粉や一等粉などと分類されています。
灰分の含有が増えれば等級が下がるようになっています。
等級の高低が小麦粉の品質の高低とは関係のない点に注意が必要です。
単純に灰分の多少で等級が変化するだけです。
白いパンが珍重されていた名残でしょう。
昔は白いパンが良いパンとされていました。
そのため、今では考えにくいですが漂白していたようです。
希釈した過酸化ベイソルを製粉過程で添加していたようです。
日本では昭和50年代には、自主規制で使用されていません。
近年ではむしろリーンなパンでは、灰分が多いものが好まれて使われるケースも多くなってきています。
灰分が多くなると小麦の味を強く感じるがそれが好まれる理由の一つのようです。
灰分量の違いは、小麦粉のどの部分を挽くかで変化します。
小麦粒の中心に近いものは灰分がすくなく、反対に外皮に近い部分は高くなります。
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グルテンの働き
グルテンとは、小麦粉の中のたんぱく質、グルテニンとグリアジンによって作られます。
ミキシングの初期段階では粉っぽさと弾力が共存しています。
べたついているけど弾力がある状態です。
その時点では、まだグルテンがほとんど形成されていません。
その後ミキシングを続けるていくと、グルテニンとグリアジンが網目構造を成しグルテンが作られます。
この網目構造がパンの骨格となり、この弾力性に富んだ骨格の中で発酵によって排出された二酸化炭素等がパンを膨張させていことになります。
グルテンとは、風船のゴムのような役割をしていて発酵によって発生したガスを抱き込み膨らんでいく力をもっています。
参照:ミキシング4段階
グルテンの伸展性
グルテンはまた、ミキシングによって伸展性が大く変化しれいきます。
ミキサーボウルにべたべたと付いていた生地がまとまり出し、やがて、なめらかに伸びるようになってきます。
ミキシングの段階によって生地の状態が変化していくのはこのためです。
デンプンの働き
小麦粉の成分の中で一番多くを占めるのがデンプンです。
小麦粉中に約75%含有しています。
これは、薄力粉や強力粉問わず概ねこの数値に近いものだそうです。
製パンでのデンプンの性質
パン生地中のデンプンの一部は、酵素(アミラーゼ)によって分解され糖になりイーストの栄養となります。
その他のデンプンは水を吸い上げ、グルテンと結びつきパンの骨格を補強するのに役立ちます。
さらに工程が進み、焼成により糊化することによってより強固なクラストを形成していきます。
焼成前は、グルテンが骨格になりパン生地を支えているのに対し焼成後は、糊化したデンプンによって支えらているのがわかります。
ちなみに糊化開始温度は、概ね65℃であり、85℃完了します。
クラムのべたつきなどがある場合は、中心部で温度上昇が不十分なため糊化が完了していないことが疑われます。
また吸水量の変化によって糊化温度も変化するので大型のパンで、糖分が比較的多いパンは焼き加減に注意が必要になることがあります。
小麦粉の保存
小麦粉の保存方法は、一般的に6か月を目安に冷暗所で保存を行うのが基本です。
多くのパン店では、6か月分を在庫しておくことはほとんどないでしょう。
グラハム粉やライ麦粉など比較的使用量の少ない粉は要注意です。
夏場、工場内や保管庫の室温が上昇すると酸化が進み風味を損なうことがあります。
また害虫の発生なども問題となることがあるので冷蔵庫でのこのような場合、冷蔵庫保管も検討することも必要になります。
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