中種法|(なかだねほう)の種類や長所と短所

中種法についての解説

中種法とは、使用する小麦粉の一部または、全部を先に発酵熟成させてから、本仕込みする方法です。

 

ミキシングを2回に分けて行われるのが製法上の大きな特徴となります。

中種法,加糖中種法

 

二段階に仕込んでいくので、中間に位置する種を中種と呼んでいます。

 

中種に対して、パン生地に仕上がった生地を本ごね生地と呼びます。

中種とストレート法

中だね法とオートリーズの違い

 

中だね法と似た製法にオートリーズがあります。

 

オートリーズとは自己分解といったような意味合いです。

 

フランスパンなどに対応されることが多い”工程”名です。

 

具体的には、小麦と水、モルトなどを軽く混ぜ合わせ30分程度放置します。
こうすることで水和が進み伸びのある生地の状態になります。
その後、さらに材料を入れミキシングしていきます。

 

工程が2段階になっている点では、中種と一緒ですが大きく違う点はイーストが添加されない点です。
オートリーズの場合30分寝かせた後でイーストを添加します。

 

オートリーズの目的は、1.生地への負担軽減 2.ミキシング時間の短縮 3.グルテンの過剰練和の抑制などになります。このことで、小麦の味を引き出して、歯切れの良いパンに仕上げることができます。

 

一方、中だね法の一番の目的は、きめの細かいパンを作る事があげられます。スポンジドウ法とも呼ばれ、スポンジのようなクラムに仕上がります。これは、中がねが発酵する中で、グルテンの網目構造を押し広げ、隙間を作ります。この状態でミキシングすることで、グルテンが細かく絡み合いきめを整えます。パンチも同じ原理ですが、パンチの場合は骨格の強化が目的です。

 

 

 

 

中種法の種類

 

中種法には、熟成させる小麦粉の量や糖分を配合するかどうかで呼び方が変わってきます。

 

70%中種法

 

70%中種法とは、使用する小麦の70%を中種として配合します。
さらに、70%中種法には無糖中種と加糖中種とに分かれます。

 

無糖中種は、その名の通り糖分が入らない中種になります。

 

一方、加糖中種は3〜5%の糖分を配合します。
使用する糖分はブドウ糖を使うことが多いです。

 

ブドウ糖は直接的にパン酵母が活用できるので使われるようです。

 

上白糖を使うこともありますが、仕上がるパンの甘さが決まっていればどちらを使っても大差を感じることはありません。

 

ちなみに、甘味度から考えると上白糖(しょ糖)1に対してブドウ糖(グルコース)は0.6になりやや甘味が薄くなります。

 

100%中種法

 

100%中種法とは、使用する小麦粉全部を中種として使用する製法になります。
多くの場合、無糖中種で本ごねの際に砂糖や塩と入れて生地を仕上げる方法になります。

 

特徴としては、生地の伸びが70%中種法よりさらに伸びるような感覚があります。

 

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中種法の採用

中種法の採用としては中種の熟成場所の確保など物理的要因から中規模から大規模の工場での採用が多いようです。

 

ほとんどの場合、中種熟成用の醗酵室を備えています。

 

また、このような工場では横型ミキサーを使用する場合が多くこのミキサーの特性上高速ミキシングは一般的縦型ミキサーより弱いです。

 

中種法では、高速ミキシングにたよらなくても伸びの良い生地を得られるため理にかなった製法ということになります。

 

中種の特徴の一つに機械耐性に優れていることが挙げられます。
機械耐性とは、生地の切れにくさと考えてよいでしょう。

 

大きな工場ではデバイダーやラウンダー、モルダーなどといった機械を使用することが多いため手作業に比べ生地に与えるダメージが大きくなりやすいです。

 

そのため、ストレート法で作るとボリュームにかけたパンに仕上がることもあるでしょう。

 

その点において中種法では、こういったリスクを回避することができます。

 

時間的融通

ストレート法と比べ時間に融通がきく点もメリットが大きいでしょう。

 

大型工場勤務を経験したことのある方はご存じと思いますが、比較的大きなラインでも作業中様々な要因でラインを止めなくてはならないことがしばしば起こります。

 

機械トラブルや人員不足、シフトの組間違いなどがそれにあたります。

 

当然、パン生地は待ってくれません。発酵オーバーしてしまいます。

 

しかし、中種法を採用していると比較的製品に与える影響を少なくすることができます。

 

こういったことから中種法は中規模〜大規模工場にとって非常に扱いやすい製法となります。

 

製品への影響

 

中種法の特徴をまとめると次のようになります。

  1. 中種法の特徴としては、熟成が進んでいるのでソフトな仕上がりなる。
  2. 製パン性も良く、十分に伸び機械耐性が良好である。
  3. ボリュームの面でもストレート法と比べ向上する。

デメリットは

 

  1. 工程が煩雑になる。
  2. 中種の保管場所が必要。
  3. 風味の点でもフレッシュ感より、熟成された味になり素材そのものの味とは異なってくる。

 

小さな工場でも、食パンや菓子パンに中種法を採用しているところもあるようです。
食パンは、よりしっとりと仕上がり、歯切れがよくなる。
菓子パンは砂糖の添加量から考え加糖中種法を採用することが多く、パン酵母への浸透圧によるダメージが軽減され発酵力の安定にもつながります。
結果的にカマ伸びの良い製品を作りやすくなるといった理由ではないかと推測されます。

 

中種の注意点

 

中種法の注意点としては、中種を捏ねすぎないことが大事です。
捏ねすぎることによって、グルテンが熟成の妨げとなり熟成時間が長く必要となります。
このことは、効率面で無駄がでてしまいます。

 

次に、熟成過多になると独特のすっぱい匂いが出てくることがあります。
この匂いは、製品にも表れてくるので特に注意が必要です。
この場合のリカバリー法としては、過熟した中種の添加量を10〜20%少なくし0.5%程度パン酵母を追加すると匂いを軽減させることもできます。
しかし、配合が変わってしまうので最終手段といったところでしょうか。

 

 

 

中種の熟成時間

熟成時間は、2時間〜4時間程度になります。

 

無糖70%中種で、4時間。
加糖70%中種では、2〜3時間程度となります。(2時間15分とすることもあります)

 

熟成度の判定

見極めとしては、匂いが一番わかりやすい。少しアルコール臭の混ざった芳醇な良い香りがします。
また十分膨張しているため、ちょっとしたショックで生地が落ちていく点でも判断できます。

 

100%中種について

100%中種はあまり一般的ではないように感じるが、2時間程度熟成させ糖分の高めの食パンを作っていた経験があります。

 

ミキサーボウルでそのまま常温で発酵をとり時間になったらミキサーにセットしなおして本ごねをおこなっていました。
こうすることで、保管場所を特別用意することなく小規模工場で採用できるようにしていました。

 

工程を上手く組むと、ストレスを感じることなく作業できるので参考にしてみてください。

 

特に配合操作することなく、小麦粉とパン酵母、水で中種を作り熟成後、残りの材料を加え本ごねに入ります。

 

フロアータイムは30〜40分で様子を見て分割に入るとよいでしょう。

 

後の工程はほぼストレート法に準じるかんじで良いです。

 

まとめ

ストレート法メインの工場でも、ぜひ中種法を採用した製品を作ってみてはいかがでしょうか。
様々な製法を理解しより目的にあった製品作りに近づくことができるはずです。

 

加糖中種(菓子パン)

 

 

無糖中種(食パン)

文:佐藤 俊昭

 

 

 

 

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